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遺  言

遺言書について

最近、親族間で遺産分割をめぐる紛争が増えています。こうした紛争を未然に防止するために、遺言は有効な手段の一つといえます。また、遺言は遺産をめぐる紛争防止のためだけではなく、親の面倒をよく見てくれた子供に他の相続人より多くの遺産を与えたい、また相続人以外の人にも遺産を分けてあげたい、といった親の気持ちを残しておくためにも有効です。もちろん、親の遺志は、生前に子供たちに口頭で伝えることができるでしょうが、実際に相続が発生したときに、親の遺志を尊重してその通りに遺産分割されるかどうかは分かりません。しかし、遺言書を作ることにより遺志に一定の法的拘束力を与えることができるようになります。

遺言の種類 

遺言には、主に次の3つの方式があります。

①自筆証書遺言 

遺言者が、遺言書の全文を自書して作成する遺言です。費用もかからず、いつでも簡単に作成できるのが良いところですが、遺言書の方式に不備があって無効となったり、紛失や他人による偽造・破棄などにより遺言書の内容が実現できない恐れがあります。

②公正証書遺言

公正証書によって作成する遺言です。二人以上の証人が立ち会って、遺言者が遺言の趣旨を“公証人”という専門家に伝え、公証人がこれを筆記して作成します。遺言書の原本は、公証役場で保管されます。費用や手間はかかりますが、公証人が遺言書の内容を確認するため方式不備で無効になることは少なく、紛失・偽造・破棄の恐れもありません。

③秘密証書遺言

遺言書の内容を遺言者が死亡するまで秘密にしておく遺言です。遺言者が遺言書を作成した後、これを封印し、公証人が日付を封紙に記載するなどの手続きを経て作成します。公証人により、遺言書の「存在」は明確にできますが、遺言書の内容は確認しないので、自筆証書遺言と同様、方式不備で遺言書が無効になるなどの恐れがあります。

遺言書を作成したほうが良いケース
子供がいない夫婦で、配偶者に全財産を相続させたいとき
子供同士の仲が悪く、遺産分割協議が難航すると予測されるとき
自分の面倒をよく見てくれる子供に多くの財産を遺したいとき
内縁(事実婚)の妻に財産を遺したいとき
孫に財産を分けてあげたいとき
寺院などの法人に遺産を寄付したいとき
各相続人ごとに承継させる財産を指定したいとき
相続人がまったくいないとき
Q & A

Q

一度有効に作成した遺言書を、後で撤回することはできますか?

A

遺言した後に気持ちや状況に変化が生じたときには、遺言者は遺言の方式に従い、いつでも前にした遺言の全部または一部を撤回することができます。

Q

第三者に全財産を与えるという内容の遺言書を書いた場合、その遺言書は有効ですか?

A

有効です。ただし、このような遺言を全く自由のままにすると残された相続人の生活が脅かされる恐れがあるため、相続人にも財産の一定割合を確保しておくという制度(遺留分制度)がわが国にはあります。全財産を与えられた第三者に対し、相続人が遺留分を取り戻す請求をおこなった場合、その遺留分の限度で遺言書の効力は失効します。

Q

遺言書を残した人が死亡した場合、まずは、どのような手続きが必要ですか?

A

遺言書を残した人が死亡した場合、遺言書の保管者は、すみやかに家庭裁判所にその遺言書を提出します。そして、相続人全員に呼出状を発送したうえ、遺言書の現状を保存することを目的に、家庭裁判所で「検認」という手続きを受けなければなりません。ただし、遺言書が公正証書遺言である場合には、これらの手続は不要です。

Q

遺言書の内容は、どのようにして実現されるのですか?

A

遺言書の内容には、遺言書の効力発生とともに当然にその内容が実現されるものを除き、遺言執行者の執行により実現することができます。遺言執行者は、遺言書により指定することができますので、その遺言書で適任者を指定しておくのが望ましいといえます。

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